日本の家はカビだらけ?カビ対策でやるべき4つのこと
日本の夏は高温多湿。そのジメジメを好んで大量発生するのがカビです。そのままでは家の中がカビだけになってしまうことも。
カビはダニの餌やアレルギーの原因になることがあり、注意が必要です。今回は、カビ発生のメカニズムと、やっておきたい4つの対策方法をご紹介します。
日本の夏はカビが生えやすい「ジメ暑」
日本は世界でも平均湿度が高い国のひとつ。特に梅雨時は湿度が跳ね上がり、東京の6月~7月の平均湿度は、なんと80%近くにもなります。
そんなジメジメと暑い日本では、あらゆる場所でカビが発生する可能性があります。というのもカビは湿気が大好き。湿度が70%を超えると一気に繁殖をする性質があるからです。
日本は温帯のイメージがありますが、実はジメ暑ランキング(※)で世界4位の国。一般的に高温多湿の国には、タイやインドネシアなど赤道近くの熱帯雨林気候の地域が多いのですが、日本はそれほど赤道の近くはありません。同じような緯度のニュージーランドでは湿度は低めです。
にもかかわらず、日本の夏がこれだけジメ暑なのは、水蒸気をたっぷり含んだ太平洋高気圧が日本列島を覆ってしまうから。
だから日本の梅雨時~夏は湿度がとても高く、家の中にもカビが生えやすくなってしまうのです。
(※「過ごしづらい不快な蒸し暑さ」を『ジメ暑』と定義し、気温や湿度を考慮した『ジメ暑指数』を世界10都市でランキング/tenki.jp)
博物館にはカビ対策マニュアルがある
博物館や図書館の資料保存でもカビに悩んでいます。カビは衣食住や工業製品のほとんどを栄養源として分解、劣化させます。中には大切な文化財がカビで汚染され、破損してしまったことも。
そこで文部科学省では文化財や資料を保存する観点から「カビ対策マニュアル」を作成。そこには、文化財を守るための様々なカビ対策方法があり、実践されています。
梅雨は特にカビが生えやすい季節です。「カビ対策マニュアル」を参考に、カビが発生しにくい環境づくりをして清潔に健康的に過ごしましょう。
カビが発生するメカニズム
カビ対策には相手を知ることから。カビが生えやすい環境について知っておきましょう。カビが生えるのに必要な要素は、「水」「温度」「栄養」の3つ。
中でも「水」が不可欠で、湿気の多いところほどカビが生えやすくなります。浴室やトイレなど湿度が高い場所でカビが多いのもそれが理由です。
水まわり以外でもカビは見られます。例えば結露がしやすい場所、加湿器を使う部屋、人の汗や呼気が多い空間も多湿になるのでカビが生えやすくなります。
カビは「温度」も関係しています。「カビ対策マニュアル」によると一般的なカビは、およそ0度~40度の間で繁殖をするとのこと。
低温ではカビの生育は遅くはなりますが、冷蔵庫の中でも少しずつ繁殖します。また、冬だからといって安心はできません。四季を通じてカビが発生する可能性があります。
またカビの「栄養源」はあらゆる範囲にわたっていて、木、繊維、皮革や、食べ物のカスや人間から出る皮脂などの汚れ、空中にただようホコリも餌になります。
カビの胞子は空気中に漂っています。つまり家の中のあらゆる場所でカビが生える可能性があるということ。お馴染みのお風呂やキッチンはもちろん、リビングや和室、寝室や子供部屋などあらゆる場所でカビが見られます。
わが家のどこにカビが生えやすいか、既に生えてしまっているか、まずはそこから確認してみましょう。
見えない、手が届かない場所は要注意
カビは一見分かりにくいこともあります。汚れだと思っていたら、実はカビだったということも少なくありません。そのまま放置してしまえば、素材を傷め、健康に悪影響を与えてしまうことも。
家の中のカビには以下のものがあります。
<水まわりのカビ>
浴室のカビは気付きやすいのですが、洗面所やトイレのカビは見逃してしまっていることも。洗濯機の裏側やトイレマット、タンクの下側の配管まわりは多湿になりがちな場所。黒く汚れていたらカビの可能性があります。
<窓まわりの黒い汚れ>
窓まわりで黒い汚れを見つけたら結露によるカビの可能性が大。ガラスの周囲に巡らされているビードと呼ばれるゴムの部分の黒い汚れ、レールの隅に溜まった黒いゴミ、レースのカーテンの黒ずみなど、全て黒カビの可能性があります。
<和室の白い汚れ>
柱や畳の表面に白い粉が吹いていたらカビの可能性が大。これは一般的に白カビと呼ばれるもの。木部や衣類によく発生します。もちろん黒カビが生えることもあります。
<壁紙や塗り壁の汚れ>
壁紙クロスの継ぎ目に黒い汚れがあったり、珪藻土や漆喰などの塗り壁に斑点のような汚れがついていたりしたら、結露によるカビの可能性が大。防カビ機能があっても、汚れと湿気が組み合わさればカビが生えることがあります。北側の壁面や、タンスの裏、収納内部でもよく見られます。
<網戸の目の汚れ>
網戸の目が詰まっていたら、汚れに加えてカビが発生している可能性が大。メッシュ形状のものは汚れが溜まりやすいので、カビが生えやすくなります。他にも目詰まりがしやすいエアコンや加湿器のフィルターでもよく見られます。
<家具のカビ>
木や皮革もカビの栄養源です。家具やソファーの裏側など普段あまり見ないところにカビが生えていることは多いもの。湿気は下方にたまりがち。滅多にお掃除をしない場所は要注意です。
<冷蔵庫のカビ>
低温でもカビはゆっくりと繁殖しています。冷蔵庫の内部に黒い汚れがあったらカビの可能性が大。特に温度が高い野菜室によく見られます。
カビ対策でやるべき4つのこと
家のカビ対策で重要になるのは、カビを発生させない環境づくりをすること。カビが生える3つの要素「水」「温度」「栄養」を揃えないようにすれば繁殖を防ぐことができます。
温度は「人の快適温度」と「カビの繁殖温度」が重なっているので対策が難しくなりますが、湿度コントロールと汚れの除去ならすぐにできます。
「カビ対策マニュアル」で推奨しているのは以下の4つ。どれも暮らし中の工夫でできることばかりです。しっかりと対策をしてできる限りカビを防ぎましょう。
1.定期的清掃
これはカビの栄養源を除去するためのもの。ホコリや汚れを溜め込まないことが肝心です。
博物館や図書館の書庫などでは、汚れを持ち込まないよう靴カバーを付けたり、靴マットで汚れを落としてから入ったりなどの対策をしています。
カビを防ぐ掃除のコツは、高いところから低いところへ、掃除用のワイパーなどを使ってホコリを静かに丁寧に取り除くこと。特にカビが生えやすい場所は重点的に掃除をしておきましょう。
ただし水拭きでそのまま放置はNG。水分はカビの大好物です。「カビ対策マニュアル」でも、水拭きをしたら、必ず「から拭き」をするよう記載されています。
2.正常な空気環境
室内外を問わず、空気中にはカビの胞子やホコリが舞っています。外気の取り入れ口である24時間換気システムの吸気口のフィルターはいつもキレイな状態にあるよう、定期的な掃除と交換を忘れずに。
加えて空気清浄機を併用するのも効果的です。ただし空気清浄機のフィルターも定期的に掃除をしましょう。
エアコンのフィルター掃除も忘れずに。カビが生えたままでは、家中にカビの胞子をまき散らすことになってしまいます。
3.温度湿度のモニタリング
湿度が70%を超えるとカビは一気に繁殖をします。室内の湿度は50%前後をキープするよう、エアコンや除湿器を上手に使いましょう。
調理時には換気扇を回し、洗濯物の部屋干しは避けて。部屋の湿度をむやみに上げない暮らしの工夫が必要です。
また梅雨時に窓開け換気をすると室内の湿度が一気に上昇するので要注意。24時間換気システムを使いながら、適宜除湿をしていきましょう。
窓周りや北側の壁面のカビは結露が原因です。
結露を防ぐためには断熱性能の向上と、湿度コントロールが必要になります。断熱性能を向上させるためには、内窓の設置や壁面への断熱材の貼り付けが効果的。また冬場の加湿器による過加湿もカビの原因になっていますので、注意をしましょう。
4.滞留しない空気の流れ
空気が滞留しやすい場所には湿気が溜まりやすくます。部屋の隅、タンスやソファーの裏、収納内部など空気だまりができやすい部分は、風通しよくしておきましょう。
天気がよく湿度が低い日は、家具をずらしたり、収納の扉を開けたりして風を通しましょう。風が通りにくい場所はサーキュレーターを使うのもおすすめです。
カビが生えたら隔離する
カビが生えてしまったら速やかに除去をしましょう。
カビ取りをする際は、専用のカビ取り剤や消毒用エタノールを使って、そっとふき取りを。こするとカビの胞子が空中に飛び散ってしまいます。
博物館などではカビが発生した資料は、被害を広げないために隔離をします。カビがついたウエスやシートはビニール袋に包んで素早く捨てましょう。
ただし薬剤を使うことで素地を傷めたり変色させたりする可能性があります。特に皮革製品はアルコールで染みになることが多いので要注意。取扱説明書をよく読んで従い、まずは目立たないところで試してから使いましょう。
カビには、みそやチーズ、ワインなどを美味しくしてくれる良いカビもあれば、病原菌になる悪いカビもあります。家のカビは対象物を分解・劣化させ、健康に悪影響を及ぼすやっかいなもの。カビを繁殖させない環境づくりで、毎日を気持ちよく健康的に暮らしましょう。