犬も猫も人も心地よく暮らす家の工夫!省エネや安全対策も忘れずに

犬や猫と人が快適に幸せに暮らすためには、床材や壁材選びはもちろん、安全対策やペットの長寿化に伴うバリアフリーへの配慮も必要な時代です。長年、犬や猫の多頭飼いの経験を持ち、数多くのペット共生型住宅を手掛けてきた一級建築士が、犬や猫と人が幸せに暮らす家の工夫をご紹介します。
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室内飼いの増加で飼い主の悩みも増加

今や、犬も猫も室内飼いをするのが一般的な時代です。犬は完全室内飼いが9割近く、猫も室内のみでの飼育が8割以上(※)となり、その割合は年々増加しています。
それに伴って増えているのが家の悩み。人が暮らしやすい家でも、犬と猫と一緒に暮らすとなると、不便だったり汚れや傷に悩んだり、時には危険なこともあります。
犬や猫を室内飼いしている方の家の悩みには以下のようなものがあります。皆さんの家でもあてはまるものがないかチェックしてみましょう。
・掃除が大変
・家の中が汚れやすい
・床や壁に傷がつく
・フローリングがすべる
・家の臭いが気になる
・留守中もエアコンを付けるので電気代が心配
・犬や猫たちが運動不足になっている
・犬や猫たちにストレスが溜まっていそう
・散歩帰りの足ふきが大変
・あちこちいたずらされる
・犬や猫が高齢になり段差がのぼれなくなった
・脱走の不安がある
これらは室内飼いだからこその悩み。家の中で犬や猫、人が共に快適に暮らすためには、家づくりにも工夫が必要になるのです。
人も犬も快適な床材選び三原則

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ペットと快適に暮らすためには、犬は床の対策、猫は壁の対策をしておくのが基本。
まずは犬と快適に暮らすための床材選び三原則をご紹介しましょう。
<犬と快適に暮らす床材選び三原則>
・足が滑りにくい
・傷やアンモニアに強い
・掃除がしやすい
犬の室内飼いをしている家を数多く見てきましたが、床材選びで、犬の健康、お手入れの手間、そして見た目の美しさにも大きな差が付きます。
特に犬の健康問題は深刻で、必須なのは足が滑りにくい床材であること。フローリングが原因で、股関節の病気や脱臼が増えています。
市販されている多くのフローリング材は、犬にとっては滑りやすく歩きにくいもの。私たちも氷の上で立とうとすると下半身に力が入るのと同じように、滑る床の上で犬が身体を支えるためには股関節や後肢に大きな負担が掛かります。
以前、わが家で飼っていた犬が生後半年でブリーダーさんと会う機会があり、その際に後ろ足にちょっと触っただけで、「フローリングの上を歩かせてる?」と指摘されたことがあります。滑るからふんばってガニ股になり、股関節の病気へと繋がっていきます。
滑りにくい床にしておくことは、犬だけでなく人が安全に暮らすためにも重要なポイント。床材選びの際には、滑りにくい加工がされているかを確認しましょう。
耐水性や耐アンモニア性の確認も必要です。一般的なフローリングはアンモニアが付着すると化学変化を起こして黒く染みになり、水拭きを繰り返すと表面劣化を起こしやすくなります。ます。また犬の爪は固いので、走り回ると木の表面が傷だらけになることも。
いまどきはペット対応製品として、様々な建材メーカーから、滑りにくく、アンモニアや傷に強く、水拭きもできる床材がありますので、表示をよく見て選びましょう。
耐久性だけを比較すれば、タイル張りが秀でているのですが、踏み心地が固いので足が疲れやすくなります。これは人間の足の話です。
犬も人も快適に暮らすためには、弾力性や柔らかさを持ちつつ、表面に様々な機能が付加された床材を選ぶと、共に健康的に快適に暮らせるようになります。
猫は壁対策が必須!壁材選びの三原則

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猫を飼っている家では壁面の対策が必須です。猫の爪はとても細く、気付かないうちに壁のあちこちが傷だらけになってしまうことも。猫と快適に暮らすための壁材選び三原則をご紹介しましょう。
<猫と快適に暮らす床材選び三原則>
・ひっかき傷に強い
・拭き掃除がしやすい
・臭い対策をすれば更に良し
猫を飼っている家の悩みといえば壁面での爪とぎです。爪で力いっぱい研がれてしまうと、ビニールクロス、木材、柔らかい塗り壁、樹脂シートで覆われた化粧建材、皮革、布地、ラタンなどもぼろぼろになります。
猫は壁も走ります。床から上部の家具の上や棚に向かって壁を駆け上がったり駆け下りたり。その際には爪を出して壁に引っ掛けて走るので、壁面や家具が傷だらけになることも。
猫と人が快適に暮らす家にするポイントは、壁材や家具は表面が固い素材を選んで、爪が掛からないようにしておくこと。
表面に特殊な化粧シートが貼られた固くつるつるとした建材や、硬質なフィルム加工がされたビニールクロス、タイル、外壁などに使用する表面硬度が高い塗り壁などを選べば、爪に負けることがなく美しさが長持ちします。
もちろんその際には、別に爪とぎ場や猫の習性を満足させる運動場所を用意してあげるのを忘れずに。
また猫は壁に体をこすりつける習性があります。実は犬も同じような行動をします。いつも同じ壁際に体をくっつけて寝ることもあり、犬や猫を飼っている家に行くと、壁の下方だけ黒ずんでいることも。そこで爪とぎ対策を兼ねて、壁の下半分だけ掃除がしやすい高耐久の壁パネルやフィルムを貼っておくと、汚れを防ぎやすくなり、汚れてもサッと拭きとるだけでキレイになります。

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犬や猫を飼っている家の大きな悩みのひとつ、家の臭いも、壁材選びの工夫で対策ができます。こちらは調湿・脱臭機能を持つタイル壁材です。水拭きもでき、高級感があるのでインテリアのアクセントにもなります。
ストレス対策の散歩や遊びをしやすく

犬や猫は本来、元気に走り回る動物ですから、健康的に暮らすためにはそれぞれの習性に合った運動が必要です。いつも家の中でじっとしていては運動不足におちいり、ストレスが溜まってしまうことも。
犬や猫たちがいつも元気に楽しくいられるよう、運動がしやすい工夫をしておきましょう。
犬は平行移動、猫は上下移動を好む傾向があると言われています。つまり犬の運動は散歩。犬の散歩は健康を維持するための運動として、またストレス解消のためにもとても大切な時間です。
その際に気になるのが足の臭いです。雑巾で拭いているけれどなんとなく臭う、ざぶざぶと洗いたいけれど手間が掛かると感じている人もいらっしゃることでしょう。
犬の足の裏には汗腺があり、雑菌が繁殖すると臭いの原因になります。手間なくキレイに洗えるよう、足洗いがしやすい家の工夫をしておくと清潔が保ち易くなります。
大型犬は抱き上げるのが難しいため、屋外で足を洗ってから屋内へと入るようにすると、玄関や廊下を汚さなくなります。おすすめはウッドデッキのそばに足洗い場を設け、そのまま家に入れるようにしておくこと。外部に足洗い場を設置する場合は、お湯が出るようにしておくことも忘れずに。
小型犬は大きなボウルがついた洗面台で洗うと便利です。深さがある大型ボウルとカウンターが一体になったタイプの洗面台なら、身体ごとすっぽり収まるので洗いやすく、後片付けも簡単です。また脇に広めのカウンターを取り付ければ、グルーミングや家事などにも便利に使えるマルチスペースとして活躍してくれます。

猫は上下運動を好みます。市販品のキャットタワーや、壁面に取り付けるキャットウォークを取り付けて、いつでも家の中で楽しく運動ができるようにしておきましょう。
こちらはホームセンターなどで入手がしやすい2×4材を使ってDIYで設置ができるキャットウォークです。強力なアジャスターを使って床と天井に突っ張って作ります。
キャットウォークは壁面に設置するので、省スペースなのがメリット。突っ張りタイプならビスで留める必要がないので、賃貸住宅でも設置が可能です。ただし猫の性格によっては、せっかく作っても使わないことも。猫に気に入ってもらえば上下運動がしやすく、毎日を健康的に暮らせることでしょう。
留守中エアコンは必須、省エネな家に

動物を飼っている家では、お留守番の間もエアコンは付けっ放しになります。そうなると、気になるのが電気代。昨今、電気代が高騰していますから、できるだけ省エネにする工夫をしておくと安心です。
省エネな家にするコツは、窓の性能を上げること。暑さも寒さも主に窓から出入りをしていますので、窓の性能を向上させることで、夏涼しく、冬暖かく、エアコンの電気代を削減しつつ、犬も猫も人も快適に暮らせる家になります。
夏の暑さを防ぐポイントは、大量の熱を運んでくる強い日差しを家の中に入れないよう、窓の外側でシャットアウトすること。冬の寒さは、室内の暖かい空気を逃さないように窓の断熱性能を上げることです。
具体的なリフォーム方法には、内窓の取り付け、ガラスの交換、窓そのものの交換、窓の外側に日よけをつけるなどの方法があります。どれもリフォーム用製品を使えば、1時間~半日以内でできるものばかり。
こういった窓の性能向上リフォームは、国や自治体による減税や補助金の制度が充実しているので、お得にリフォームができます。具体的な方法は下記でもご紹介していますのでご覧になってみてくださいね。
脱走防止やバリアフリーも配慮して

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犬や猫が室内で暮らすためには、安全対策にも配慮をする必要があります。
まずは誤飲を防ぐための工夫をしましょう。救急で動物病院に運ばれる要因では、誤飲によるケースがかなり多くなっています。
小物などが出しっぱなしになっていると、遊んでいるうちに飲み込んでしまうことがあります。犬の場合は想像以上に大きな物を飲み込んでしまうことも。
散らかりは誤飲を誘発します。動物を飼うとトイレや散歩用品、おもちゃなど物が増えるものです。スペースの有効活用がしやすい壁面収納などを使って、家の中をスッキリと片付けて安全にしておきましょう。
その際は、扉付き収納にするのがマスト。犬も猫も慣れてくると、扉を器用に開けて中を探ることもあります。ラッチなどで簡単に開かないようにしておくと安心です。

犬や猫の脱走防止対策も必須です。普段家の中で暮らしていると、いったん外に出てしまうと迷子になってしまうことも。
一戸建ての場合は敷地の周囲に、フェンスと門扉を取り付けておくことをお勧めします。その際は来客時に門を開けたら飛び出してしまったということがないように、門扉に鍵をつけておくことを忘れずに。
玄関ドアの内側にもひと工夫。宅配便の受け取り時に、開いた玄関ドアのスキマから外に飛び出してしまったケースもあります。これは犬も猫も同様の危険があります。玄関ドアの内側にもうひとつ脱走防止用のゲートを取り付け、二重ドアにしておくと安心です。

最後は動物たちのバリアフリー対策です。犬や猫の寿命は年々伸び、現在、飼い犬の平均寿命は14.76歳、飼い猫は15.62歳(※)。一緒に暮らすためには、犬や猫の老後のこと、バリアフリーについても検討しておく必要があります。
犬も猫も高齢になると人と同じように、段差が危険になります。階段の昇降ができなくなったり、ベッドの上にのぼれなくなったり。
階段には滑り止めマットを敷き、できるだけ階段の昇降をしないで済むように生活環境を整えて。ベッドの上で一緒に眠るならステップを置いて昇り降りがしやすい工夫をしてあげましょう。
先日シニアのためのリフォームについてテレビでお話をしたのですが、その時も今と同じようなことを言いました。人も動物も同じなのです。
犬や猫たちとの暮らしは何事にも代えがたい幸せがあります。小さな住まいの工夫で人も動物も快適に元気に、そして楽しく暮らしてくださいね。
※)令和4年(2022年)全国犬猫飼育実態調査/一般社団法人ペットフード協会調べ