何を削って何を残すのが正解?浴室リフォームのコストダウン術

浴室リフォームでのコストダウンで悩むのが、どこを削ればいいかというもの。時にはコストダウンをしたせいで使い勝手が悪くなり後悔をしてしまうことも。そこで不要なものは省いて快適度はそのまま!わが家にとっての浴室リフォームのコストダウンの正解を見極めるポイントをご紹介します。

それを無くすと後悔するかも?

リフォームの見積りを取ってみたらはるかに予算オーバーしていた!ということは多いもの。そこでコストダウンを図って予算に近付けていくわけですが、そのせいでせっかくのリフォームが残念な結果になってしまうことがあります。


水まわりリフォームは他の部位に比べて、面積が狭い割にリフォーム費用が高額になりやすい場所。そしてその費用の大部分が、システムバスやキッチン、便器などの製品代金で占められています。


一般的なリフォームの場合、総額の中で設備や建材などの商品が占める割合は30%ほどなのに対し、水まわりでは80%以上になることも。トイレなら広さは約0.5坪、浴室は1坪、キッチンは4畳程度にもかかわらず、製品代金だけで数十万円~数百万円ほどになります。


中でも浴室は製品代金が占める割合が大きく、コストダウンのためには、選ぶ製品のグレードの見直しや、オプションの有無などをしっかり吟味することが必要に。


しかしコストダウンのために本当は欲しかったものを削ったらやっぱり不便だった、逆に頑張って高額なオプションをつけたのにほとんど使わずムダだったという声も少なくありません。しかもこれらの要不要は生活スタイルや価値観によっても変わります。


浴室は家族全員が毎日使い、また家事の手間に直結しているなど、生活に大きな影響を与えている場所。コストダウンを検討する際には、その後の生活をしっかり見据え、わが家にとっての正解をしっかりと見極めていく必要があります。

サイズで価格が跳ね上がる

浴室リフォームのコストダウン、まずはシステムバスのサイズに関することからご紹介しましょう。狭い浴室を大きくしたいというリフォームの要望は多いものです。しかし浴室を大きくすると、リフォーム費用は一気に増大します。


システムバスの価格はサイズが大きくなるほど高価になり、高グレードになるほどその差額が開きます。加えて、壁や床を壊したり、新しく作り直したり、配管を延ばしたりといった工事費用も必要に。


0.75坪の浴室の場合、同サイズのシステムバスへの交換リフォームなら、費用は70万円~から可能ですが、1坪に面積を広げる場合は、製品代の差額と工事費を併せてプラス50万円~ほどが必要です。家の外側に増築する場合は、外壁を壊したり新たに作ったりなど更に費用がかさみます。


費用を節約したいなら、サイズはそのままでリフォームをするのがコストダウンの早道です。ゆったりと過ごせるという面では広いお風呂のほうが快適ですが、狭いほうが掃除はラクに済み、浴槽に貯める湯量が少なくて済むので水道光熱費の節約になるなどのメリットも。わが家にとっての正解を導きだすためには、こういったその後の手間や維持費も含めてよく検討する必要があります。

マイナスオプションでコストダウン

次にシステムバスのグレードとオプションの吟味でコストダウンを図りましょう。


まずはシステムバスの本体のグレード選びから。システムバスはメーカーごとに高級、中級、普及品などの「グレード」に分けられていて、予算に合わせて選べるようになっています。


高級グレードは、より高品質な浴槽やパネルが標準装備になっていて、そのグレードでしか取り付けできない特別なオプション品なども用意されています。例えば肩湯が出る浴槽や、おしゃれな間接照明などは高級グレードならではのオプション。


コストダウンのためには、どうしてもこだわりたい設備が無いのであれば、ここは価格の安いグレードを選ぶのがマストです。


次に、鏡や洗面器カウンター、収納棚、水栓金具、浴槽、照明、扉、床材、壁材、排水口などの細かい部材を選んで組み合わせ、総額が決まります。


しかし、これらをひとつひとつ選ぶのは意外と大変。そこで多くのメーカーでは「標準仕様」もしくは「基本仕様」と称して、各グレード内でそれらを適宜組み合わせてパッケージにしたものを数種類用意していますので、そこから選ぶといいでしょう。その際も特にこだわりが無いなら、一番安いタイプを選べば費用の節約ができます。


ここまでで、かなり大きな費用の差がつきます。1坪のシステムバスで高級グレードで選んだ場合と普及品の中で徹底的にコストダウンをした場合では、製品代金で200万円近くの差が出ることも。


特に費用がかさむのがオプション品で、リラックスのための機能付き浴槽やミストサウナなど、あれば楽しいものですが、これからの暮らしに本当に必要か、一度立ち止まって検討を。ただし安全のための手すりや、節水のための水栓などは、今後の暮らしに必要な物として付けておくことをお勧めします。


またチェックしておきたいのが「マイナスオプション」です。メーカーがパッケージした「標準仕様」もしくは「基本仕様」にセットされている物でも省くことができるものがあります。


例えば、洗面器カウンターや鏡、収納ラックなどは無くすことができたり、水栓金具も基本機能だけのものにしたりすることでマイナスオプションとなり、その分更なるコストダウンができます。


ムダなものは徹底的に省くのがコストダウンの基本。まずはグレードを見極め、次に標準仕様やマイナスオプションをよくチェックしていくことで、費用の削減ができます。

カウンターや収納、鏡は必要?

リフォーム後3年の浴室の様子。水栓金具のカルキ汚れが目立ちます(撮影:一級建築士事務所 OfficeYuuのYuu)http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/

浴室のコストダウンでは、何を削って何を残すのかで悩んでいる人も多いことでしょう。中でも、カウンター、水栓金具、浴槽の素材、鏡、収納棚などで悩む声をよく聞きます。


注意したいのが、コストダウンで削ったことで、毎日の暮らしの快適性が落ちてしまったり、掃除がしにくくなったりといったことが起きてしまうこと。お風呂の使い勝手や、掃除の手間に大きく直結する部分は慎重に検討する必要があります。


こちら筆者の家で使っているのと同タイプ。カウンターは壁の間にスキマがあるのでざぶざぶ洗って流すことができ、3年経っても汚れ知らず。水栓金具の水滴汚れも目立ちません。ただし水栓が故障した際には、一般的な壁付けタイプよりも修理費用がかかるケースもあるようです(サザナ/TOTO)https://jp.toto.com/

まずは洗面器を置くカウンターです。


掃除がしにくそうということでコストダウンのために付けないケースもありますが、風呂椅子に座って洗面器を使うならあったほうがラクな体勢でいられます。カウンターが無いと大きく体を屈める必要があり、特に高齢者は使い勝手が悪くなります。


もちろんほとんどシャワーだけしか使わない、風呂椅子には座らないというのであれば、なくてもOK。お風呂の入り方によって必要性が変わります。


カウンターの清掃性に関しては、各社、水はけ良く汚れが付着しにくい仕上げの工夫がされていて、お風呂上りにシャワーでざっと流すだけでキレイを保ちやすくなっていますのでそれほど心配の必要はありません。


水栓金具に関しては、一般的な壁付けタイプのシャワー水栓は金属部分がむき出しになっているため、気になるのがカルキ汚れが目立つこと。カバー付きのプッシュやタッチタイプのほうが価格は高くなりますが、汚れがつきにくく目立ちません。


浴槽の素材選びも悩みの種です。毎日をラクにしたいなら、掃除のしやすさを第一に選びたいもの。


高品質な人造大理石製や表面に特殊コートをかけているタイプは掃除がしやすいのが特徴。普及品で使われるスタンダードなFRP製(Fiber Reinforced Plastics 繊維強化プラスチック)は皮脂が付きやすいと感じる人が多いようです。


この辺りの選択は予算との相談に。お掃除を徹底的にラクにしたいなら、他の部分でコストダウンを図りつつ、ここだけは譲らず費用を掛けるといったメリハリのある予算配分をするのが、満足度の高いリフォームにするコツ。


筆者の家の場合は掃除をできるだけラクにしつつ、キレイに見せたいという要望があったので、カウンターとカバー付きのプッシュ水栓をつけて正解でした。また浴槽は以前、人造大理石に比べてFRPは汚れの付きやすさを感じていたので人造大理石を選択。こちらも汚れ落ちの速さに正解を実感しています。


浴室鏡は、ほとんど使っていないのに、こびりついたカルキ汚れを取るのが大変という声は少なくありません。何となく付けておくと便利かもというのは手間が増えるだけ。あえて取り付ける必要が無いのであれば、削ることでその分コストダウンができ、掃除もラクになります。


収納棚は、後から自分で買い足す手も。ほとんどのシステムバスの壁にはマグネットがくっつきます。最近は安価でおしゃれな収納用品がいろいろありますので、そういったものを活用すればコストダウンができます。


大人気のタワーシリーズ。マグネットなので好きな位置に貼り付けができ、ボトルの底がぬめらず衛生的。そのままポンプを押して液体を出すことができます(マグネットディスペンサーホルダー タワー 3連/山崎実業)https://lab.yamajitsu.co.jp/

浴室換気乾燥機が不要な家も

浴室の中をカラッと乾かし、洗濯物を干すにも役立つ浴室換気乾燥機。浴室には必須と思われがちですが、実はあまり使っていないという家もあります。


デメリットは何といっても光熱費の高さ。洗濯物を乾かすには4時間以上もつけっぱなしにする必要があり、ランニングコストが思うよりかさみます。


また洗濯物を干している間はお風呂にはいれないという声も。家族が多いので、夜中にそっと洗濯をして干しているという人もいました。


また最近では浴室換気乾燥機をほとんど使う必要がない家もあります。それは高気密・高断熱の家。家全体を計画的に換気しつつ、温度と湿度を一定に保ち続ける工夫がされているため、お風呂に入った後も短時間換気扇をつければ浴室内がすぐに乾き、洗濯物はランドリールームなどで部屋干しをすることが多いなど、あえて浴室換気乾燥機を使う必要がないのです。


あれば便利な浴室換気乾燥機ですが、設置費用も維持費用もそれなりに掛かる設備。わが家で使いこなせるかどうかをよく検討し、不要であるならその分大きくコストダウンすることが可能です。

浴室コストダウン基本の3原則とは?

それでは最後に、浴室リフォーム費用のコストダウン「基本の3原則」をご紹介しましょう。


1.まとめて工事 


2.得意メーカーを聞く


3.プロに聞く


1.まとめて工事 


リフォーム工事の特性から、工事はまとめて行うとその分効率が上がり費用がお得になります。特に水まわりリフォームは、各所に入る業種が共通していること、また製品をまとめて仕入れることでその分値引きも期待できます。


さまざまなリフォーム会社から、水まわり3点リフォームセット(浴室・洗面・キッチン)、4点セット(+トイレ)などのパッケージ商品が出されていて、お得にリフォームができるようになっています。ただし、含まれている製品の品番と工事範囲は要チェック。後から追加工事が出ないよう、しっかり確認をしましょう。


2.得意メーカーを聞く


リフォーム費用の中で製品代金が占める割合が大きい水まわりだからこそ、製品の値引きもコストダウンのポイントのひとつ。そのリフォーム会社が得意とするメーカーを選ぶと、値引きの恩恵を受けやすくなるので、思い切って値引きが大きいメーカーがあるか、聞いてみるのもひとつの手です。


ただし無理な値引きを要求するのはNG。工事の品質が下がる可能性がありますので注意をしましょう。


3.プロに聞く


見積もりの中でどこに費用が掛かっているのかをよく知っているのは、その見積もりを作ったリフォーム会社です。費用を削減したい旨を伝えて、コストダウンのアイデアを貰いましょう。もしかしたら気づいていない部分にコストダウンの方法があるかもしれません。


その際にはコストダウンによって、暮らしのどんな影響を与えるか、デメリットはないか、よく確認しておくことを忘れないようにしましょう。


コストダウンの正解は各家庭によって異なります。大事なことは妥協点とこだわる点を整理して、自分たちのこれからの暮らしの満足や快適度は落とさないようにすること。わが家にとっての正解を見つけ出し、心からやってよかったと思える浴室リフォームにしましょう。

PROFILE

Yuu(本名:尾間紫)
Yuu(Oma Yukari)
一級建築士事務所 OfficeYuu代表。一級建築士・インテリアコーディネーターとして、数多くの住宅リフォームの設計、工事を手掛けてきた経験から、本当に価値あるリフォーム情報をお届けします。

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