子供部屋に最適な広さとレイアウトは?狭い空間でも快適で勉強がはかどるアイデア
子供部屋に最適な広さは?狭いほうが家族と交流がしやすい、広いほうが友達を招きやすいなどさまざまな意見がありますが、どの場合でも押さえておくべき大切な要素があります。また年齢によって求められるものが変化します。
今回は、理想の子供部屋を目指す!狭くても快適で勉強がはかどるプランや家具のレイアウト方法、豊かな感性を育むアイデアを、住宅を専門とする一級建築士がご紹介します。
CHAPTER
子供部屋の広さの平均は6.4畳
子供部屋の悩みといえば広さとレイアウトのこと。狭いとレイアウトが上手くできない、かといって広いと快適すぎて部屋から出てこなくなりそうという声も。理想的な広さはどれくらいでしょうか?
「子どものための住まい探しに関する調査(※1)」によると、実際に用意した子供部屋の広さの平均は6.4畳でした。ただしこの調査では収納を含むかどうかについては言及されていません。
6畳を部屋としてまるまる使えるなら床面積は約10平米。6畳は日本の住宅ではなじみ深く、ベッドや机、本棚のレイアウトがしやすい広さです。年齢の変化に合わせた模様替えにもラクに対応ができることでしょう。
実際の現場でも、家の面積にゆとりがある場合は、やはり6畳を希望するケースが多くなっています。
ちなみに子供部屋の広さの平均6.4畳のうち、0.4畳はおおよそ幅1mのクローゼットの面積に相当します。つまり「6畳の部屋+1m幅のクローゼット」が一般的な子供部屋の広さといえそう。
しかし理想的な子供部屋の広さが6畳かといえば、そうともいえません。個室は最小限にして家族とコミュニケーションを取りやすくしたいという意見や、この調査でも「勉強はリビングでできるようにあえて狭くした」という回答が見られるなど、面積が小さいことで得られるメリットに注目する人も増えています。
各家庭における子供の育て方や教育に対する価値観は多様化し、子供部屋の作り方も時代と共に変化をしてます。今や狭くても快適な子供部屋が作れる時代に。以前のように6畳にそれほどこだわる必要はなくなっているのです。
※1)アットホーム株式会社「子どものための住まい探しに関する調査」より
https://athome-inc.jp/news/data/questionnaire/children-sumai-202211/
共用部を作れば個室は小さくていい
子供部屋に6畳を確保するのは難しい場合は、個室は寝室の機能に絞り、それ以外を共用スペースで行うようにすれば面積は3畳~4.5畳で足ります。
小さな子供部屋+共用部を作るプランは、家族間のコミュニケーションが取りやすいのが最大のメリット。子供が部屋にこもりにくくなり、共用部を増やすことでリビングなど他の部分にゆとりが生まれます。
例えば、きょうだいや親子で一緒に使える共用のワークスペースを作れば、各部屋にそれぞれが作るよりも省スペースになります。その際は、勉強や仕事に集中できるよう、くつろぎの場から切り離すように計画を。図書館や自習室のように静かで落ち着きのある場所づくりをしましょう。
本棚も家族の分をまとめたファミリー本棚にすれば、まるで図書館のように。本を通じて家族の会話もはずむことでしょう。収納は家族で共有するファミリークローゼットスタイルなら、子供部屋の収納は身の回りの最低限で済み、子供の持ち物の管理もしやすくなります。
3~4.5畳も高さを活かせば広々
3~4.5畳の子供部屋の場合、高さ方向を活用すれば6畳とほとんど変わらないほどの機能を持つ快適な空間にできます。
子供部屋に必要な基本の家具は、ベッド、机、いす、収納。中でも一番場所をとるのがベッドです。シングルベッドの大きさは1m×2mあります。
3畳の部屋の内法寸法は約1.7m×2.6m、4.5畳なら約2.6m×2.6m。床にベッドを置くとそれだけでもういっぱいに。そんな時は部屋の高さ方向を有効活用!ベッドを宙に浮かせましょう。
ベッドが浮けば床面がまるまる使えるようになり、机や本棚のレイアウトがしやすくなります。4.5畳もあれば6畳にそのままベッドを置くよりも有効に使える床面積は広いのです。
高さ活用には屋根裏を利用してロフトを作る、ロフトベッドと呼ばれる家具を使うなどの方法があります。ロフトベッドとは高い位置にベッドを設置した家具のこと。下部に収納や机をレイアウトできるので、床面が広く使えます。
ロフトベッドは組み立てるだけの既製品の他に、造作家具で作る方法も。造作家具は部屋の形に合わせてスキマなくぴったりと設置ができるのでムダがなく、収納するものに合わせて引き出しなどの取り付けも可能です。
立体活用がしやすい家具を使えば、狭くても快適な子供部屋になります。その際には後で解体や組み換えができる家具を選んでおくのがポイント。先々の生活スタイルの変化に対応しやすくなります。
勉強や健康にも影響する家具レイアウト
子供部屋に家具を置く際には、レイアウトにも配慮をしましょう。置き方によっては勉強のはかどり具合や、健康面にも影響を与えます。
まずは机の向きをチェック。
右利きの場合、窓が右手側にあるとペンを持った時にノートに手の影ができてしまいます。学校の机も黒板に向かって左側に窓がくるようにレイアウトするのが基本。左利きの場合は逆になります。
ベッドは北側の壁や窓からは離して通気よく。
断熱性の低い一戸建てやマンションの場合、北側の壁面は結露やカビが発生しやすい状況にあります。また窓の近くはコールドドラフト現象と呼ばれる冷気の流れが起きやすいため、寝ている間に顔が冷たくなってしまうことも。窓の近くにベッドが来る場合は、断熱スクリーンや内窓を取り付けるなど冷気が流れてこない工夫をしておきましょう。
家具のつくりもチェック。
子供の成長は早いもの。家具も子供と一緒に成長できるものを選んで。椅子や机は身長に合わせて高さが調節できることが必須です。
持ち物も成長と共に変化。小さな頃はおもちゃや絵本が中心ですが、大きくなるにつれてパソコンや教科書に変わり、衣類も畳むものから吊るすものへと変わります。収納は可動棚とし、引き出しやボックス類は先々に気軽に買い替えができるよう安価な樹脂製品を活用すると便利です。
最も重要な寝室としての役割
このように面積が広くても狭くても、工夫次第で快適な子供部屋は作れます。しかしどの場合においても重要になるのが安眠できる「寝室」としての機能です。
前出の調査によると、初めて子供部屋を用意した年齢は6~8歳、小学校の低学年が最多となっています。これはちょうど子供がひとりで寝始める時期と重なるタイミング。勉強や宿題はリビングでしても、寝るのは自室。つまり子供部屋に最初に求められるのは寝室としての役割です。
それ以降、遊びや勉強、仕事などを別の場所ですることはあっても、その家に住んでいる限り、子供部屋で眠り目覚めます。
睡眠は人生の1/3を占める大切な時間。成長にも大きくかかわってきます。子供部屋作りの際には「寝室として快適な環境を整える」ことが、これからの子供の生活においてとても重要なこととなるのです。
寝室として快適にする3つのコツ
眠りが浅いと集中力が落ち、昼間にぼんやりしてしまうこともあります。子供たちの健康のために、また勉強に集中するためにも、質の高い睡眠がとれる環境づくりをしましょう。
快適に眠れる寝室の条件は、夜にぐっすり眠って朝にすっきり目覚める環境であること。そのためには「音」、「光」、「空気」の3つの環境を整える必要があります。
まずは音環境。
夜間に騒音があると睡眠に悪影響を及ぼします。ぐっすり眠るためには静かな環境づくりを。外からの騒音が気になる場合は、窓の内側にもう1セット樹脂製の内窓を取り付けるリフォームをするといいでしょう。内窓は防音性能や断熱性能を向上させるので、静かで快適な子供部屋になります。
注意をしたいのがリビングから子供部屋に出入りをする間取りです。夜間にテレビの音や話し声が聞こえると睡眠に影響を与えます。できるだけ距離を離す、簡易的な防音を施すなどの工夫をしましょう。
光環境は、夜はしっかり暗く、朝はぱっと明るくが基本です。
光のメリハリは体内時計を整え、昼間の勉強の集中力を高めてくれます。遮光カーテンやシャッターなどを上手に使って整えて。
最近は、手軽に後付けができるタイマー式のカーテン自動開閉装置もあります。朝になったら自動で開くようにしておくと、朝日の中で気持ちよく目覚めることができるでしょう。
最後は空気環境です。室温や湿度、空気の質にも気を配りましょう。
夏に涼しく冬に暖かく、日当たりがよく明るい部屋なら毎日を気持ちよく過ごせます。ここでも内窓は大活躍。室内を快適に保ちやすくなるので、エアコンの効率が上がり光熱費の削減にも役立ちます。
子供部屋のプランを検討する際には、まずは寝室として適切に機能をしているかを改めて確認。快適に眠れる部屋になるよう配慮をしましょう。
勉強部屋として使うのは中学生以降
個室で本格的に勉強をするようになるのはある程度大きくなってから。小学生の頃までは、親に見守られながら勉強をするリビング学習が中心です。
勉強への集中度も部屋の環境に左右されます。思春期を迎える中学生以降に勉強がしやすい部屋づくりのお手本となるのは、静かで緊張感が持続しやすい図書館です。
そのためにまずは音環境を整えましょう。寝室と同じく騒音は大敵。静かな環境が必要です。内窓の取り付けや騒音源から離す工夫を忘れずに。
また図書館のように整然とした空間は、緊張感を保ちやすくなります。片付けがしやすい収納、本棚など、部屋の中が散らからないように計画をすることも肝心です。
照明選びのお手本も図書館です。部屋全体を明るく照らしつつ、文字が見やすい白い光の手元灯を併用して。薄暗い部屋で手元だけ明るくすると目が疲れます。間接照明は大人になってから。部屋全体を明るくしましょう。
豊かな感性を育てるインテリア
子供部屋の計画の際にはインテリアにもこだわりましょう。美しいインテリアや優れたデザインは、子供たちの見る目を養い、豊かな感性を育ててくれます。
子供たちが持つ鋭い感性には大人たちも驚かされることがたくさん。子供部屋のインテリアは、大人が一方的に押し付けるのではなく、一緒に考え手助けをすることで、子供たち自身が本当に好きなものに出会うことができるようになるでしょう。
面積が狭くても理想の子供部屋づくりは可能です。子供たちが健やかに幸せに、そして勉強にも集中しやすい子供部屋を目指してみてくださいね。