足元の冷えの原因は窓にあった!手軽な断熱リフォームのアイデア
冬のテレワークを経験し、家にいると足元が冷えることに気付いた人が多いようです。実はその意外な原因となっているのが窓。窓に断熱対策をすれば、冷気の侵入を防ぎ、冷えの改善や暖房光熱費の削減ができます。今回は、手軽な窓の断熱リフォームのアイデアと、一級建築士の筆者が実際に取り入れている製品もご紹介します。
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家にいるときの冷えや暖房費の悩み
会社ではそれほど気にならなかったのに、家で仕事をしていると足元が冷える、エアコンをつけても顔がほてるばかりで足元は寒いまま、光熱費も気になるという人が多いようです。
「冬季テレワーク中の身体の冷えや悩みに関しての実態調査(※1)」によると、なんと83.6%の人が冬のテレワークで手足の冷えが気になると回答しています。
冷えというと女性のイメージがありますが、男性も78.8%の人が冷えを気にしているという結果に。また全体の40%以上の人が、暖房光熱費が気になると回答しています。テレワークをきっかけにして、わが家が寒いことに改めて気付いた人も多いのではないでしょうか。
この足元の冷えがやっかいなのは、寒いからと言ってエアコンの温度設定を上げても、なかなか改善しないことにあります。というのも、原因は窓にあることが多く、足元に冷気の流れができてしまっているからなのです。
※1:冬季テレワーク中の身体の冷えについての実態調査。週に2日以上テレワークを行っている、東京在住の会社員男女500名(女性250名/男性250名)を対象/ミドリ安全.com
足元の寒さは窓からの冷気が原因
窓は家の断熱の弱点です。断熱性能が低い窓からは、冷気がどんどん侵入してくるので、エアコンで空気を温めていても、窓際に近付くと寒さを感じます。
また断熱性能が低い窓は、外気の影響を受けやすく、冬になると冷え切ってしまいます。その冷たい窓ガラスや枠に室内の暖かい空気が触れると発生するのが結露です。
そしてそこで冷やされた空気は、対流で下方へと流れ、冷気となって床の近くを這うように室内へ広がっていきます。この現象を「コールドドラフト現象」と呼び、まるで足元に冷たいすき間風が吹いているように感じることもあります。
コールドドラフト現象は、窓の断熱性能が低いことによって起こります。いくらエアコンで空気を温めても、そのそばから窓で冷やされてしまえば、足元は寒いまま、顔はほてって、暖房光熱費がかさんでしまうことになるのです。
冷え対策には窓の断熱が効果的
足元に冷えを感じたら、窓の断熱対策を行なって、冷気を防ぎましょう。理屈がわかれば対策は意外と簡単です。
基本は窓の内側に空気層を作ること。空気は熱を伝えにくい性質を持つ、高性能の断熱材のようなものです。窓の内側に空気層があれば、冷気の侵入を防ぎ、冷えた窓に暖気が触れなくなるのでコールドドラフト現象も起きなくなります。
窓そのものを断熱性能が高い窓に交換する方法もあります。最近はリフォーム専用製品が充実しているので、それを使えば思うより工事は簡単です。それでは、手軽な窓の断熱リフォームのアイデアと、筆者が実際に取り入れている製品などもご紹介しましょう。
カーテンで窓をすきま無く覆う
まずはカーテンを使った空気層の作り方からご紹介しましょう。窓をカーテンですき間無く覆って空気層を作れば、冷気を防ぎやすくなり、足元の冷えが和らぎます。カーテンは密に織られた厚手の生地を選びましょう。
注意したいのは、足元のすき間です。冷気は下に向かって流れますから、カーテンは床のぎりぎりまで長くして、床との間にできるだけすき間を作らないようにしましょう。
両サイドやレールの上部にもすき間ができないように工夫をすれば更に効果が上がります。サイドを巻き込むように縫製するリターン仕様のカーテンを使ったり、レール上部にカバーを掛けたりするなどの工夫をするといいでしょう。
ハニカムスクリーンの空気層で断熱
手軽に窓の断熱性能を向上させることができるのが、蜂の巣状の空気層を持つ高断熱スクリーンです。こちらの写真は、蜂の巣がシングル構造で操作が軽いハニカム・サーモスクリーンライトと、ダブル構造でより断熱性能が高いハニカム・サーモスクリーンの断面図です。
スクリーンそのものが空気を含んでいるので、高い断熱効果を発揮し、軽いので手軽に取り付けができます。色柄デザインが豊富に揃っているので、インテリアに合わせて選ぶことができ、半透明のスクリーンと組み合わせたツイン、上からも開けることができるツーウェイ、横引き、電動開閉、天窓に取り付けることができるタイプなど様々なバリエーションがあります。
筆者が事務所の北向きの窓の断熱に使っているのが、こちらの高断熱ダブル「ハニカム・サーモスクリーン」のツーウェイタイプです。
窓そのものは複層ガラス(2枚ガラス)なので、それほど断熱性能が低いわけではないのですが、それでも冬になると窓の近くは寒く、冷気の流れや足元の冷えが感じられました。
ハニカム・サーモスクリーンの取り付け後は足元に冷えを感じることはなくなり、とても快適に。また冷気は窓ガラスを伝わるように下方へ向かうので、昼間は上半分だけを開けて、下を閉めておけば、明るさを確保しつつ冷気を防ぐことができます。
内窓リフォームで防音や結露防止も
本格的に窓の断熱性能の向上を目指すなら、内窓の取り付けリフォームをして二重窓にする方法があります。内窓とは、今ある窓はそのままに、内側にもう1セット取り付ける窓のことをいいます。
内窓ならカーテンやスクリーンを閉める必要がありませんから、冷気を防ぎつつ明るく快適に暮らせます。また断熱性に加えて、防音や結露の抑制にも効果がありますので、室内環境を快適に整えてくれます。
内窓のデザインにはガラスとガラスの間に格子をはさみ込んだ格子入り複層ガラスや、和室用複層ガラスタイプ、和紙調ガラスタイプなどもあります。枠の色は、白、グレー、濃い茶、ナチュラルなどが揃っていますので、インテリアに合わせて選びましょう。ガラスは夏の日射熱を防ぐ機能を持つLow-Eガラスや、半透明のデザインガラスなども選べます。
筆者の自宅の寝室には内窓を取り付けています。冬の冷気だけでなく、夏のエアコンの効きもよくなり、また外の騒音を防いでくれるので、静かに気持ちよく眠ることができています。
内窓の取り付けは、1か所1~2時間程度と工事はとても簡単です。冬の冷えや結露に悩んでいる、静かな環境にしたいといった場合は、内窓の取り付けリフォームを検討するといいでしょう。
手軽な高断熱窓への交換リフォーム
内窓は、断熱+防音・結露防止効果は高いのですが、開閉の手間が2倍になるため、ちょっと面倒に感じるという声もあります。そんな時は窓そのものを高断熱タイプに交換するリフォームを検討するといいでしょう。
最近は、工事方法が進化しているので、手軽な工事で窓の交換ができるようになっています。今ある窓枠に新しい枠をかぶせて取り付けるカバー工法なら、壁を壊す必要がなく、工事時間は1か所あたり約半日です。その際には、開かない窓を開く窓に変えて、風通しをよくすることも可能です。
注意したいのは、窓の断熱性能は、複層ガラスやLow-Eガラスなどガラスの性能だけでなく、枠の性能によって大きく左右されることです。
樹脂の枠はアルミに比べて熱の伝わり方が1,400分の1程度とされています。樹脂窓は断熱性能に優れています。同じ複層ガラスを使っても、樹脂窓とアルミサッシでは、性能が異なることを知っておきましょう。
サーキュレーターで光熱費の削減も
窓を対策したら更にもうひと工夫。自然対流によって暖気は上に、冷気は下にたまる性質がありますので、サーキュレーターを使って空気をかくはんしましょう。
サーキュレーターは扇風機よりも風をまっすぐ遠くまで送ることができるため、室内の空気をかくはんしやすくなっています。足元が冷えると感じたらエアコンの設定温度を上げるよりも、サーキュレーターを使うほうが、電気代もお得です。
一戸建ての1階の場合は床下の断熱が不足している可能性もありますが、冷えを感じたらまずは窓をチェックしてみてください。窓の断熱性能を上げる工夫で寒い冬を暖かくお過ごしくださいね。