狭くても理想のトイレにするリフォーム!工夫次第でここまで快適に
狭いトイレでも便器や扉選びの工夫で、快適にすることができます。今回は、窮屈で掃除がしにくい、圧迫感がある、手洗いの取り付けがしにくいなどの悩みを解決!理想のトイレを作るリフォームのアイデアをご紹介しましょう。
一級建築士の筆者が自宅のトイレで使っている、狭くても便利な便器や扉もご紹介します。
CHAPTER
トイレが狭いと何が起きる?
トイレは四方を壁で囲まれています。その限られた空間の中で、便器から立ったり座ったり、掃除をするのですから、適切な広さが無いと、体勢が変えにくい、屈んで掃除がしにくい、また圧迫感があって落ち着かないといったことが起きます。
中には、中腰で衣類の上げ下ろしをする際に正面の壁に頭をぶつけそうになる、掃除の際に屈めないのでいつも中腰で疲れてしまう、おしゃれなインテリアにしようと飾りを置いてみたけれど却って狭さを強調してしまったという声も。
そんな狭いトイレでも、リフォームの際の設備・建材選びや、プランの工夫で、身動きを取りやすくしたり、空間を広く感じさせたりすることが可能です。
もちろん本当に狭過ぎるトイレの場合は、面積を広げるほうがいいでしょう。我が家のトイレは本当に狭いのか?まずはトイレの適切な広さを知り、我が家のトイレ寸法をチェックしてみましょう。
トイレの適切な広さは?
トイレの適切な広さは、便器の先端から正面の壁まで40㎝以上、便器の幅+両側15㎝以上ずつが必要とされています。でもこれはあくまでも最低の広さです。
身動きが取りやすいようにするためにはそれよりプラス15㎝、便器の先端から正面の壁まで55㎝以上あると快適です。これは便器の前に大人が横向きに立てる寸法です。
奥行きが小さいトイレの場合は、幅の広さでカバーすることもできます。筆者のアトリエのトイレは便器前に40㎝しかありませんが、便器の幅+両側22㎝ずつあるので、意外と快適に使うことができています。
トイレは寸法が5㎝変わると、動きやすさや感覚的な広さが大きく変わる場所です。まずはわが家のトイレ寸法をしっかり確認してみましょう。
マンション・戸建て・面積別プラン例
狭い・広いというのは感覚的なものですから、便器のデザインやインテリアの違い、窓の有無などによっても感じ方が変わります。
そうはいってもイメージするのはなかなか難しいもの。最新の便器と狭いからこその工夫がされた「面積別のトイレの空間事例」を3種類ご紹介しますので、我が家のトイレと比較してみましょう。
<マンションで多いトイレのサイズとプラン例>
マンションのトイレは、コンパクトな0.4坪(約78㎝×120㎝)~0.5坪(約78㎝×170㎝)未満のプランが多くなっています。
<戸建てで多いトイレのサイズとプラン例>
戸建てのトイレは、0.5坪(約78㎝×170㎝)が多くなっています。贅沢なつくりの場合は、0.75坪(約120㎝×170㎝)のプランもあります。
コンパクトサイズの便器を選ぶ
狭いトイレを快適にするためには、まずは便器前の寸法を確保しましょう。ここの寸法が取れていれば、便器の前で体の向きを変えたり、立ち座りをしたり、掃除の際に屈んだりといったことがしやすくなり、また空間が広く感じられるようになります。
便器のサイズは、メーカーや機種により異なります。狭いトイレではコンパクトサイズの便器を選ぶのが基本です。
こちらの写真のタンクレストイレは、長さ65㎝です。タンク付きの便器の長さは約76㎝ですから、その差は10㎝以上。0.4坪(奥行き120㎝)のトイレでも、便器の先端から壁まで55㎝を確保できます。
筆者のアトリエのトイレは奥行きが105㎝ですが、タンク付きからこの機種に交換し、便器前に40㎝を確保できるようになりました。
ただしひと口にタンクレストイレといっても、長さは約65~72㎝と幅があります。寸法をしっかりチェックして選びましょう。
便器を浮かせて掃除を楽にする
狭いトイレで特に不便を感じるのが掃除の時です。狭くて屈むのが難しかったり、あちこちに体をぶつけてしまったり。身動きがとりにくいため苦労をしている人も多いことでしょう。
そんな時は、床から浮いている便器を選ぶ手もあります。これは背面にあるフレームで便器を支える構造で、便器の下が空いているので、立ったままモップでサッと床の掃除ができます。
ただし便器は小さく見えますが、背面に便器を支えるフレームとタンクが必要です。後ろのキャビネットを加えると全体の奥行きは約87㎝ありますので注意をしましょう。
ローシルエット便器を選ぶ
狭いトイレを広く感じさせたい場合は、高さを抑えるのが効果的です。これはほかの部屋でも同じこと。低い家具でまとめると部屋が広く感じられるようになります。
特にトイレは狭いため、便器のデザインで空間イメージが大きく変わります。そこで活躍するのがローシルエット便器です。タンクレストイレを代表として、タンクが無い分、高さが抑えられるのでトイレ内がすっきりと広く感じられるようになります。
ただしタンクレストイレには水圧などの設置条件があり、場合によっては取り付けができないことも。そんな時は、タンク付きなのにローシルエットな「タンクレス風」便器があります。
狭いトイレを広く使う便器選びのコツは、長さは小さく、高さは低く。もちろん座り心地も大切ですから、ショールームでしっかりチェックして選びましょう。
タンク周りはデッドスペース
狭いトイレでは収納スペースも悩みのひとつ。掃除用具やペーパーのストックなどの置き場がなく、つい出し放しになってしまうことも。トイレ内に物が増えると雑多な印象が強まり、さらに狭さが強調されます。
狭さを感じさせないコツは、余計なものは出さない、見せない。特に床の上に物を置かないことが大切です。
狭いトイレで収納スペースを確保するためには、必ずといっていいほど存在するデッドスペースを活用しましょう。
タンク付きなら、タンクの周辺がデッドスペースになります。上部に吊戸棚を取り付けることはあっても、下部は配管などがあるため、これまであまり活用されていませんでした。タンクをキャビネットで覆った「キャビネット付き便器」なら、タンク周りを収納として活用しつつ、配管やコード類も隠してくれます。
タンクレスの場合は、壁のコーナー部を活用するのもいいでしょう。コーナーに設置できる三角形の収納セットや、手洗い器もあります。限られた面積だからこそ、スペースを見逃さずに活用して、すっきり美しく整えましょう。
手洗い場をトイレの外に設置する
狭いトイレの場合、トイレ内に手洗い器を設置すると、さらに狭くなり、体をぶつけてしまうこともあります。そんな時は、トイレの外に手洗い器を取り付けるアイデアもあります。
例えば玄関近くのトイレなら、トイレの外に手洗い器を設置して、帰宅時の手洗い場と兼用する手も。デザイン性の高いボウルやカウンターを選んで、おしゃれな雰囲気に設えましょう。
全てをトイレの中で完結しなくても大丈夫。手洗いだけでなく、収納もトイレ外の空間を活用して、トイレの中をすっきりさせましょう。
トイレ前の狭さは扉で解決できる
狭い廊下や洗面所に面したトイレの場合、中だけでなく、扉の外側が狭いこともあります。特に問題になるのが扉の開閉です。開き扉の場合、開閉に大きなスペースが必要なので、人にぶつかりそうになったり、体をねじって入る必要があったり、扉のせいで収納スペースが削られてしまうことも。
先ほどの筆者のアトリエの狭いトイレも、洗面所から入るプランで、一般的な開き扉では、洗面台の前に人がいると、ぶつかって開閉ができない状態にありました。かといって引き戸にするには、引き込みのスペースが無く。
そこで開き戸の3分の1のスペースで開閉ができる中折れドアに交換し、洗面台の前に人が立っていても、スムーズに出入りができるようになりました。
少しでも広く感じられるよう、インテリアは洗面所からの連続性を意識しています。掃除は開けっ放しで行っていますが、開き扉と違って開閉スペースが小さいので、タオル掛けに当たることもなく、誰かが洗面所を使っていても邪魔になりません。
トイレ前のスペースが狭い場合は、引き戸だけでなく、中折れドアという選択肢もあります。狭さを扉のデザインで解決できることもありますので、工夫してみてくださいね。
トイレは1人になれる場所、本当の自分が出せる場所とも言います。狭くても便器や扉選び、プランの工夫で快適なトイレを目指してみてくださいね。