部屋干しはどこが正解?梅雨の洗濯がラクな家にする!カーポート活用も
梅雨の洗濯に関する調査によると、部屋干し経験者はなんと9割以上にものぼり、さまざまな困りごとを抱えている人が多いことが分かりました。実は、家の中には部屋干しに向いていない部屋もあります。住宅リフォームを専門とする一級建築士の筆者が、部屋干しNGの部屋、雨の日でも快適な物干しスペースを確保するリフォームのアイデアをご紹介します。
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9割以上が部屋干し、浴室は2割以下
雨の季節、皆さんはどこに洗濯物を干していますか?梅雨の洗濯に関する調査(※1)によると、部屋干しを「毎回する/状況に応じてする」人が、全体の9割以上にもなることが分かりました。
しかも天候に関係なく毎回部屋干しをしている人が3割近くもいるなど、今や部屋干しは日常の中にある当たり前のものとなっています。
では洗濯物を家の中のどこに干しているかというと、1位はリビングで48.8%、2位は空き部屋26.2%、3位は浴室17.8%、そして寝室14.0%と続いています。
最近の浴室には乾燥機が付いている家が増えているにもかかわらず、2割以下しか使っていないのは意外なようですが、実は浴室では干したくないという声も少なくありません。
その理由には、光熱費がもったいない、お風呂に入る時間と重なる、狭くて干しきれない、きちんと乾かないなどがあります。
これからの時代は、浴室以外にも洗濯物を気持ちよく乾かせる部屋干しスペースを確保しておくことが、毎日を快適に暮らすためにとても大事なこととなっているのです。
(※1梅雨の洗濯のお困りごとを調査/パナソニック株式会社)
部屋干しの問題点トップ3
部屋干しの困りごとは、在宅時間が増えたことで更に増加傾向にあります。先述の調査では、約6割がコロナ禍の部屋干しで、以前より気になることが増えたと回答しました。
中でも、「乾きにくさが気になるようになった」 「洗濯物から発生する部屋干し臭(生乾き臭)が気になるようになった」 「部屋の中で干していると邪魔と感じ、目に付くようになった」がトップ3にランクイン。
これら以外にも、「部屋の湿度が上がりすぎる」 「物干しセットが出しっぱなしで片付かない」 「部屋に生活感が出る」 などの困りごとを感じている人もいることでしょう。
実は家の中には、このような問題が起きやすい部屋があります。環境によっては部屋干しがNGな部屋も。まずは洗濯物が乾く仕組みと、臭いの原因を知り、わが家の室内環境を改めて見直してみましょう。
部屋干しNGの部屋は?
濡れた洗濯物が乾くのは、水分が空気中に蒸発するからです。蒸発といっても沸騰するのではなく、水の分子が空気中に分散すると考えるとイメージがわきやすくなります。
この蒸発が起きやすい空気環境を作ってあげると、洗濯物は早く乾くようになります。ポイントは、「高い気温」 「低い湿度」 「風」です。
高い気温と低い湿度は空気中に水を蒸発しやすくしてくれます。風は洗濯物の周囲に滞留した湿気を追い払い、常に新しい空気にさらすことで水を蒸発しやすくしてくれます。
洗濯物の臭いの主な原因は、乾くまでに時間が掛かって繁殖してしまった雑菌です。洗濯物を早く乾かせば、このような臭いの悩みも解決しやすくなります。
つまり部屋干しに向かない部屋は……
<北向きの部屋>
北向きの部屋は寒く、冬になると結露が発生しやすい環境にあります。室温が低いので乾くのに時間がかかり、また部屋干しによって更に結露がしやすくなり、室内のカビの原因になります。
<乾燥機を付けていない浴室>
排水口などからの湿気で、他の部屋より湿度が高い環境です。浴室に干すなら乾燥機をつけましょう。
<寝室>
夏の寝室は、寝ている間の汗を吸い込んだ布団から発散される水分で、他の部屋よりも湿度が高い傾向にあります。寝室で干す場合は、エアコンのドライ機能や除湿器を使いましょう。冬に加湿器代わりに部屋干しをする場合は、室温を18度以上に保つようにするといいでしょう。
<和室>
畳や繊維壁などの自然素材は、部屋干しで部屋の湿度を上げるとカビが生えやすくなります。和室で部屋干しをしていたら、塗り壁に黒い斑点状のカビが生えた、畳を裏返したらカビだらけになっていたというケースもあります。
部屋干し向きの部屋は?
部屋干しに向いている部屋は……
<日当たりのいい南向きの部屋>
日当たりのいい南向きの大きな窓がある部屋は、日射熱で室温が上がりやすいため、洗濯物が乾きやすくなります。
リビングに干している人が多いのは、面積にゆとりがあり、乾きやすい条件に適った空間であることが多いからです。
ただし室温が高くても、湿気が多いと乾くのに時間が掛かります。エアコンのドライや除湿器、サーキュレーターを使って乾きやすい環境づくりを忘れずに。
<西日や朝日が入る部屋>
敬遠されがちな西日が入る部屋も部屋干し向きです。日射熱によって室温が上がり、洗濯物が乾きやすくなります。カーテンや雨戸をあけて、日差しを取り込みながら乾かしましょう。
ちなみに朝日と西日の日射量は同じなので、強い朝日が入る部屋も同じです。午後に洗濯するなら西向き、朝に洗濯するなら東向きの部屋に干せば、より効率よく乾かすことができます。
もちろんこの場合も、湿度コントロールを忘れずに行いましょう。
<洗濯機やクローゼットから近い場所>
乾かしやすさだけでなく、干しやすさにも注目を。「洗濯物の仕分け~洗濯機~干場~たたみ~しまう」までを、短距離でスムーズにできる場所を選んで部屋干しをすれば、無駄な動きが減って洗濯が更にラクになります。
家電の力で気持ちよく乾かす
そうはいっても湿度コントロールは難しいもの。部屋干しに向いている部屋が無い、もっと早く乾かしたい、そんな時は家電の力を借りましょう。
エアコンのドライと送風は部屋干しの強い味方、洗濯物が乾きやすい環境が作れます。また洗濯物の周囲に湿気が滞留しないよう、サーキュレーターも併用すると、更に早く乾くようになります。
こちらの写真は、エアコンのそばに取り付けがしやすい、壁付けの部屋干しユニットです。天井に取り付けるタイプもあり、使わない時は天井や壁面にすっきりと納めておけるので、収納場所に悩むこともありません。
筆者の自宅では、天井付けタイプをエアコン近くの日当たりのいい場所に設置しています。臭いが発生することもなく、四季を通じて気持ちよく乾いてくれます。
部屋干しに特化した衣類乾燥除湿機もあります。持ち運びができるので、どこでも洗濯物が干せるのが大きなメリット。
こちらは、洗濯物から蒸発した室内の湿気を回収し、乾いた風を当てることでスピーディーにカラッと乾かすことができる製品です。電気代を抑える省エネ機能もあります。
部屋干しにあまり向いていない部屋でも、家電を上手に活用すれば、洗濯物が気持ちよく乾かせるようになります。
壁材で湿度コントロールをする
漆喰やエコカラットなど、調湿機能を持つ壁材を使って、室内の湿度コントロールをする方法もあります。
調湿機能を持つ壁材は、湿度が高いときは湿気を吸収し、乾燥しているときは湿気を放出して、室内を快適に保ってくれます。このような壁材は消臭機能もあり、洗濯物を干す部屋の環境を適切に整えてくれます。
DIYリフォームで壁紙の上から塗ったり貼ったりできる製品もあります。洗面所など湿気の気になる部屋にもこのような壁材を使うことで、さらっと気持ちのいい空間になります。
おしゃれな部屋干しユニットで見せる
部屋干しをすると生活感が出てしまう、そんな時はデザイン性の高い物干しハンガーを使って、洗濯物をインテリアにしてしまいましょう。最近はおしゃれな物干し用のパイプがあります。こちらは人気のアイアン製品で、部屋干しをしている時も、していない時も絵になるデザイン。グリーンハンガーとしても使えます。
脱衣室兼用のランドリールームを作る
水まわりのリフォームを検討中なら、洗濯機置き場を独立させてランドリールームを作れば、部屋干し専用スペースを確保しながら、洗濯が楽にできるようになります。
ランドリールームとは、洗濯機を中心に、仕分けや畳み、アイロン掛けなどができるカウンターや、物干し、洗濯用シンクなどをセットしたスペースのことで、広さは畳1枚分程度から作ることができます。
場所は、浴室に隣接させ、脱衣室を兼ねて計画すれば省スペースで、そこに部屋干しユニットや衣類乾燥除湿機をセットすれば、仕分け~洗い~干し~畳みまでを、その場でできるようになります。
庭に屋根付き物干し場を作る
家の中に洗濯物を干すスペースが見つからない場合は、屋外にも目を向けてみましょう。例えば庭のテラスに屋根を後付けリフォームすれば、雨の日でも洗濯物が干せるようになります。
気になる視線は、オプションの目隠しをつければ遮ることができます。また屋根ふき材に熱線遮断ポリカーボネートを使えば、日射熱を防ぎ夏の暑さも軽減してくれます。ポリカーボネート板はアクリル板に比べ、約20倍衝撃に強く、紫外線をほぼカットしてくれるので日焼けの心配もありません。
屋根付き物干し場は急な雨でも安心していられるので、外干し派にもおすすめです。
バルコニーに屋根を付ける
あまり使えていないバルコニーがあったら、物干し場として再活用しましょう。バルコニーに屋根囲いを取り付けリフォームすれば、部屋干しと外干しの中間のような便利なスペースが作れます。
こちらの製品は、折りたたみタイプのサッシが付いているので、フルオープンすれば布団を干すことも可能です。2階なので日当たりがよく、防犯面でも安心感があり、外出中の急な雨でも安心していられます。
カーポートを活用する
カーポートも物干し場として役立ちます。実はカーポートには、洗濯物干し金物のオプションを設置できる商品が数多くあります。
一般的なカーポートの場合は、安全のために建物と間隔を開けて設置をする必要がありますが、こちらの写真のような「壁付け専用カーポート」なら、テラス屋根のように建物とスキマなく設置ができるので、雨が吹き込みにくく、洗濯物が濡れる心配が少なくて済みます。
ただしカーポートを物干し場にする場合は、視線と防犯の対策が必須です。外部からの視線を遮る目隠しパネルや、道路からの侵入や視線を防ぐゲートを取り付けておきましょう。
目隠しパネルは雨の吹き込みを防ぐ効果もあり、ゲートは今や防犯のために欠かせない設備となっています。車上荒らしは自宅車庫で起きている割合が高いというデータがあります。これを機会にカーポートの防犯について改めて検討してみるのもいいでしょう。
部屋干しをする機会が増えているイマドキの生活スタイルでは、空いたところに干すのではなく、部屋干しのためのスペースをしっかりと確保しておくことが、快適に暮らすポイント。家電活用やリフォームの工夫で、洗濯の悩みを解決して毎日を気持ちよく過ごしましょう。